JH科学展 ~John Hathwayの世界~2011.07.14 – 07.26

2011.07.18 開催レポートを追加しました。

展覧会詳細

「科学とマンガとアートのはざま」JH科学主催、JohnHathway氏による初の個展。
萌、アート、科学、そのどれにも属さない、しかし全てに属している不思議な彼の作品は、空想科学都市魔法町の作品を中心としている。
今回の展示では、彼のいままでの代表作品と創作ハードウェアや本展覧会の為に制作した新作を展示。
同人誌やその他グッズの販売も予定しています。

→販売作品はこちら

※7月4日(月)更新
pixiv Zingaroのオープニング・パーティーを7月14日(木)18:00-20:00に行います。
JohnHathway氏からの挨拶や色々なイベントを企画中です。
みなさまお誘い合わせの上、ぜひお越しください。

※7月8日(金)更新
開催期間を7/26まで延長しました。

プロフィール

JohnHathway

■JH科学 MOTS.JP■
pixiv
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2004年東京大学大学院物理工学専攻修士修了。日本人。
2005~2006年同大学院博士課程に進学、学術振興会特別研究員を兼任。(専攻は物理工学:量子極限物理学)

フリーランスにて絵、デザイン、小説、プロダクトデザイン、企業デザイン、装置開発、ロボット開発、ソフトウェア開発、動画、3D立体イラスト、企業技術コンサルタント、企業ロゴデザインなど理系の技術や理論とデザインやストーリーなど融合させた多面的な創作活動や商業活動を行っている。
科学と魔法と街をテーマにしたイラスト&ストーリー「魔法町シリーズ」を創作している。
その他、江戸時代の屏風を萌える絵でリメイクした作品など日本の伝統的分野にも興味を持っている。
ハードウェア分野では独自開発のアート的サーボモーターなどを回路やプログラムも含め開発し、ロボットなどの表現の可能性を追求している。

Japanese, completed The University of Tokyo graduate school Master’s program of physical engineering in 2004.
Then, went on to the this university study academy Doctor’s course in 2005, and served concurrently as a special researcher of Japan Society for the Promotion of Science under The Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology. (The major is physical engineering: the quantum limit physics. )
Executed by free-lance, united multipronged creation activity and commercial operation on the picture,the design, the technology, the theory, the design of the science course like a novel, product design, a corporate design, an equipment development, a robotic development, a software development, animation, 3D solid illustration, and a corporate technological consultant and the corporate logo design, etc. , and the story, etc.
Illustration & story “Magic town series” that makes the science, magic, and the town a theme is created. Additionally, interested also in a traditional field in Japan such as works to which the folding screen in Edo period is remade with the MOE loritta picture. Moreover, the work of the outlook on the world and the compatibilityof 3D solid technology were high, and the picture was adopted and collected to the demonstration DVD of Panasonic 3D Viera television.
Recently announced the art work of the magic town series seen with solid glasses in 3D solidification technology that combined originally .
Developed in the hardware field the circuit and the program also include, an art servo motor etc. of original development and the possibility of the expression such as robots is pursued.

経歴
2005 フリーのクリエイターに転身
2004 学術振興会特別研究員と博士課程兼任
2004 東京大学大学院物理工学専攻修了

展示歴
1999 コミックマーケットに初参加(以後毎年2回)
2008 Desgn Festa(以後毎年2回)
2008 pixivマーケット
2010 Circulation Art 「芸術と環境展」(上海SHUN ART GALLERY 一点寄稿)
2011 GEISAI準備中震災で中止
その他WEB上にて動画作品展示(ニコニコ動画、Youtubeなど)

メッセージ

私はこれまで科学の妄想の中で生きてきました。
私は中学校以降美術教育を受けておりません。私の作品は科学的妄想が起源となっており、とても遠回りの帰結になっています。道の脱線が絵とは関係の薄い複雑な経緯であるため、長くなってしまいますが不足無く説明させて頂ければと思います。
私は幼少に筑波の科学万博そしてロボットアニメ、SF映画など人並みではありますが国内外のSF的な科学に強い関心を持ち、幼稚園ではゴミ捨て場の電気製品をひたすら分解し、小学生では半田ごてで様々な工作し、またそのような科学漫画などを描いておりました。
私はいわゆる科学少年ではありましたが、少し変わっていたのは科学の興味の先にあったのが、宇宙物理などの正統派の科学ではなく、科学者も顔を曇らせるような超常現象的な科学でした。
それは反重力、UFO、超能力などです。
ただ、超常現象の科学の業界でも私はあえて懐疑性を強く持って、より客観的そして論理的に現象を解明するという考え方でした。
中学高校の頃は物体が浮くという反重力実験の再現を行なうため、部屋に何十キロという重さの危険な高電圧の実験装置をたくさん作り、雷のような電圧を発生させ実験をしていました。時にはビルをまるごと停電させるようなこともありました。それほど超常現象的な科学に強い興味を持っていました。

私はそのような不思議な妄想的な科学に魅了され、それが嘘なのかどうかも含め正統派の科学者に納得して貰えるような文脈と手法を確立でき、また超常現象的な科学を実現するために大学では物理学を専攻しました。特に興味があったのが物が浮くような反重力の真偽と原理です。
しかし、大学の物理学科では私の考えたような科学のイメージを持った人と出会えず、またそれを実現するには難しい土壌であると感じました。
その後、私は東京大学の大学院(修士課程&博士課程)に進学しました。
そこでやっていたのは、「超強磁場量子極限」という一言で言うと体育館くらいの大きさの装置に電気をためて、一気に電気を巨大な電磁石に流し爆発させ、世界で一番強い磁石にして何が起こるかという実験と理論です。
それはとてもエキサイティングな実験で私は好きでしたが、それでも本来妄想したような科学とは何か違う物に感じました。
その頃は少しですが功績を認められて、学術振興会特別研究員という身分も頂き、将来はアカデミックな方向に進むと周りは疑いませんでした。

しかしその後、私は気が付いたら絵の仕事をしていました。
不思議なことに大学院を辞めて絵の仕事をし出した時の記憶がほとんどありません。
やはり自分の妄想の科学とは違うと深層の心理で感じていたのかもしれません。

私が描いていた絵の内容はかつてから好きだった萌え系や少女マンガ系と言われる女の子の絵です。
少しさかのぼりますが、私は中学生の頃から科学的妄想とは別にゲームやアニメ、少女漫画などにとても興味を持っていて毎日女の子のイラストを描いていました。ストーリーなどより特に女の子の魅力を表現する上でのマンガ絵の文法の繊細さに純粋な魅力を感じていました。
しかし、当時のオタクは今ほど認められておらず、私の周りでは一般人のみならずオタクの間でもそのような絵を描くだけで軽蔑されてしまうような空気もありました。
私は中学の時から25歳になるまで親族や友人にさえ隠れて描いていました。
そして投稿したゲーム会社のイラストのコンクールで2年連続の準グランプリを頂き、大学院を中退後、その流れで女の子のイラストの仕事をいただける様になったのです。
ライトノベルの表紙挿絵や漫画の読みきり、ゲームイラスト、など大小数え切れない程フリーで活動しました。
さまざまな会社のご依頼で原稿料も厳しかったり自由に描けない物も多かったりプロジェクトが作業途中で中止になることが日常茶飯事でしたが、とてもエキサイティングで技術が無いなりにも一生懸命仕事をしました。
しかし、この間にも私の中で妄想の科学の火は消えることはありませんでした。
きっかけはあまり覚えていませんが、私は絵の仕事をはじめて間もなく、趣味で科学の妄想のCGも描き始めました。

個人的な印象では一般にCGはアートとしてアナログに比べ弱い印象を持つ方が少なくないと感じています。無限に複製できたり、アナログに比べ少ない手間で描けるという要因も小さくないからと私は思います。
しかし、CGにはまだまだ可能性が残っていると感じています。
CGは入力装置やPCにおける科学技術の発達とともに科学の観点からも進化する余地が大きい特別な絵の手法のひとつと言えます。
私はCGを描いているうちにあえて非効率的なCGの使い方を考えました。それはCGだからこそできる非効率的な絵です。そのような描き方をすれば作品に独特の奥深さの表現ができるのではないかと考えたからです。私の細かい世界観の絵はPHOTOSHOPというレタッチソフトを使っていて、通常はレイヤーと呼ばれる仮想の透明なシート状キャンバスの概念を利用して画像を作り上げています。通常のレイヤーは数枚から多くて数十枚程度使い、絵の部分ごとにレイヤーを分け編集することで作業効率を上げます。
私の使い方はレイヤーを2000枚〜4000枚程度使い、それを時系列であったり加工であったりどんどん重ねて一ヶ月〜半年かけて一枚の絵にしてゆきます。5年前の段階で通常のPCでは難しい処理ですが、それをパソコンに特別な改造を施して実現しました。その結果が良かったのか悪かったのかは判断が難しいですが、少なくともCGだからこそ出来る方法であることは確かです。
そのレイヤーは思考し迷走したプロセスの情報を含んでおり、そのレイヤーを時系列に並べ動画にすることで、今ではよく見られる絵のプロセスの動画とは少し違う印象の作品を作ることができました。
他にはCGで古い架空の屏風を作りました。これはこれまで装置の性能上描くことが難しいとても大きなサイズのCGです。この制作でこだわったことはコンピューター上だけで制作過程を完了させたことです。よく見られるテクスチャーなどの素材など使用せず古さをCGのブラシで汚れや経年劣化を手描きすることでCG段階では完全にアナログを排除しました。写真で存在したかのように合成し、一番最後に具現化しました。
また、魔法町シリーズには「反重力」の原理が仮定として物理法則に入った場合の世界変化という科学的帰結も理念の一つになっています。

そしてここ3年間は絵と同時に私は電子回路、プログラム、メカトロニクス、金属加工などを利用し、様々な装置の開発を行なってきました。
私の作業場は金属加工の旋盤やCNCフライスなど小さな町工場の様相になっています。
アートやデザインとも常に関連している科学はレオナルドダビンチを始めメディアアート、Arduinoを用いたデザインプロダクトなど様々な分野で垣間見れます。
私も科学技術を作品の画材として捉え、少ないながらもこれまで学んだ知識を生かし深い根底の部分から科学をコントロールした作品を作りたいと考えています。
ただ、科学技術を安易にブラックボックスとして使うのではなく、その詳細においてまで原理を理解した上で使うことでより自由度の高く本質的な表現の作品に近づけると考えています。
何故ならばそれを構成する科学技術やプロセスの詳細そのものが繊細な表現に対応していると感じるからです。
私もまだアートについても科学についても勉強不足ではありますが、科学や表現を勉強し模索を続けていく努力をしていこうと思っています。

私の作品は萌える絵なのかアートなのか科学なのか商業イラストなのかというと、どれにも属さないとも、しかしどれにも属しているとも言えるかもしれません。
現に私の作品は萌える絵の業界からも科学の業界からもアートの業界からも距離を置かれているのかもしれませんし、私からも無意識に距離を置いているのかもしれません。
未熟ゆえに単に中途半端とも言えます。しかし、ただひとつ確かなことは私がこれまでの人生で一貫してきた方向に向かっていることです。これからも自分なりの世界を作っていければと思っています。
この度はこのような発表の場を与えて頂き、とても感謝しております。